tabuse mio

うるわし鴨南蛮いずこ


就職で東京に出てきて早一年。


わたしはなんとか生きている。


これは、上京したてのころの話。

わたしは大好きな鴨南蛮が食べたくて

蕎麦屋に入って注文した。

出てきたのはわたしが知らない鴨南蛮だった。

何が違うって、


つゆ


そばが見えないくらいの黒いつゆ。

鴨せいろだったらわかる。

いざつゆをすすってみると、

おいしいけれど、

舌が、何かがちがうよ!と言ってる。。。

鴨も添えてあるねぎも、もちろんそばもおいしい。

つゆだけが。。。醤油からい。。。


あったかいおそばのつゆが

関西と関東、こんなにも違うなんて

思ってもみなかった。。。

わたしは東京でやっていけるのかと、

途方に暮れたのであった。。。


それからも、もしかしたら

関西風の鴨南蛮に巡り会えるのではという

淡い期待を抱きながら

いろんな蕎麦屋で鴨南蛮を頼んだ。


でも、そんなの東京で探すものではないのだ。

東京で親しまれているものに

関西のおもかげを探す

こちらの負けということである。


わたしは半ばあきらめた。

関西に帰った時に、その味を噛み締めて、

再確認することに意味があるとおもった。


そして、この間帰省した時

先斗町のはじっこのなんてことない蕎麦屋で

感動の再会を果たした。

透き通ったこがねいろのつゆの鴨南蛮に。


すすった瞬間、すこし涙が出そうになった。

薄れていた鴨南蛮の記憶が一気に蘇った。

醤油からいとかいう情報はまったくない。

いうならば、うまみの海かもしれない。

うまみの海に放り込まれたそばは尊い。

鴨自体のうまみがさらに引き立つ。


これだよ。。。 と、舌が言った。


つゆをぜんぶ飲み干してしまった。

もう、当分会えないと思うと 胸が苦しくなった。


祖国を想う兵士のきもちは こんなだろうか。

わたしは東京へ戦いにきているんだと

改めておもった。

    1. 10 リアクションTimestamp: 土曜日 2018/06/16 12:57:09鴨南蛮
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